生命と科学

1.人間の体の神秘

■人間の体は色々な物質で構成されている。
■例を挙げれば、体の60%を占める水分、骨を構成するCa、脂質、蛋白質、炭水化物(水の多くはここに含まれる訳だが)。 中でも機能的な役割を果たすのが蛋白質だ。
■蛋白質はアミノ酸の重合体である。アミノ酸とはアミノ基(-NH2)と カルボキシル基(-COOH)を持つ分子の総称であり蛋白質を構成するアミノ酸は20種類存在する。 これらのアミノ酸がペプチド結合により一列に繋がり、蛋白質となる。
■アミノ酸どうしの配列を決めるのがDNAに記憶された遺伝情報である。 DNAとはヌクレオチドという構成単位を複数重合させた高分子であり、ヌクレオチドは更にリン酸・デオキシリボース・塩基部分から成る。 塩基はアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)があり、AとT、GとCが水素結合により結合し、 またデオキシリボースと他のヌクレオチドのリン酸とが結合し、長い2本の鎖が螺旋状に巻いている。このヌクレオチドの配列がアミノ酸の配列を決定する。
■一つのアミノ酸と3つのヌクレオチド配列が対応しており、例えばグルタミン酸はGAA又はGAGという塩基配列にコードされている。
■こうしてDNAという設計図によって様々なアミノ酸の組み合わせを持った蛋白質ができ、体内のあらゆるところで働いているために生命活動は維持される。
■このDNAは非常に不思議な存在である。こんな小さなものの中に、人間を人間たらしめる情報がすべて入っているのであるから。 しかも上にあるような実にシンプルな構造でつかさどってしまう。
■DNAのシステムは正にコンピューターと同じ原理である。人間はコンピューターは作れたし、人工知能も作れたが、 それでも人間の構造にはにははるかに追いつかない。それくらい、人間の生命活動というのは非常に複雑である。
■酸素を二酸化炭素に変えエネルギーを得る、食物や水分を摂取し活動のエネルギーにするといった基本的なことから、怪我をす
れば白血球が血管をふさぎ、あらゆる生命活動に不必要又は毒となるものを排出する機能があり、体温調節の為汗をかいたり、 体の外側を守るために毛を生やし、更には体に変調が起こったのを、痛みなどの感覚で知らせる。
■人間の体というやつは言ってみれば驚異的なほど設備の整った施設なのである。生きるのに至れり尽くせりな程の機能が備わっている。 そしてこれだけの設備を整えているのがDNAなのである。
■人間は自分本位に考えてしまうから、人間の構造が何故ここまで複雑になったかといぶかしがる。 あるいはDNAの配列、すなわち人間の機能・構造はどうしてこのように決まっているのか?と疑問に思う。
■なぜなら、人間はその複雑さゆえに、かえって不便な面が多々あるからである。精密なコンピューターがちょっとした熱や埃、ウィルスに弱いのと 同じように。
■ある者は、これこそ神のなせる業だと言い張る。ある者は、ダーウィンの進化論にのっとり、 自然淘汰により、生命活動により最適な機能が生き残ったにすぎないと言い張る。
■また、同じ論調であくまで偶然の産物だと言う人もいるだろう。
■しかし僕の考えは少し違う。人間とはたくさんの生命体のコロニー(集合体)なのだと。完璧を目指して何者かに作られたものなどではないのだと。
■人間はたくさんの細胞の集まりである。そしてこれは、地球に最初に現れた生命体である単細胞生物と同じような構造を持っているのだ。
■もちろん詳しく言えば違うところはたくさんあるのだけど、重要なのは分裂と言う形で繁殖するところである。 細胞も細胞分裂という形で繁殖を行う生物と考えれば、動植物は単細胞生命体のコロニーであるという言い方もできる。
■要するに生きている場所の違いだ。単細胞生物は海から生きるための成分を摂取し、 人間の細胞は人間の摂取する食物や水分、酸素等を血液などを通して摂取する事で生きている。
■人間が死ねば細胞も死ぬ。ゆえに人間が死なないための様々な治癒能力とは、人間を構成するあらゆる物質が生存するための反応なのである。
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